インドネシアのジャワ島にある世界遺産プランバナン寺院遺跡群は、遺跡公園の内外に数多くのヒンドゥー寺院と仏教寺院が残る巨大な遺跡群です。この中心的存在であるプランバナン寺院(ロロ・ジョングラン寺院)は、ジャワ建築の最高傑作と言われるヒンドゥー寺院です。天に向かってそびえ立つ神殿、古代インド叙事詩「ラーマーヤナ」のレリーフなど、その美しさは見る者を惹きつけてやみません。
広い遺跡内ではどこを観光したらいいか迷ってしまうと思うので、これだけは押さえておきたいプランバナン寺院遺跡群の見どころ7つを厳選しました。プランバナン寺院遺跡群の場所や行き方、営業時間・所要時間・入場料・服装など、実際に訪れて分かった情報を詳しく紹介していきます。
プランバナン寺院遺跡群について
プランバナン寺院遺跡群は、ボロブドゥール寺院遺跡群と並ぶジョグジャカルタの二大観光スポットです。プランバナン遺跡は9世紀頃に古マタラム王朝によって建てられたヒンドゥー教の寺院。一方、ボロブドゥール遺跡は、ほぼ同時期にシャイレーンドラ王朝によって建てられた仏教寺院。宗教が異なる2つの遺跡が同じ地域にあるのは、2つの王朝は婚姻関係にあったためと言われています。プランバナン遺跡の一帯には仏教寺院も多く見られ、ヒンドゥー教と仏教が友好的に交流していたことを示す貴重な遺跡でもあります。
場所
プランバナン寺院遺跡群は、インドネシア・ジャワ島中部のジョグジャカルタ市内から約15kmの場所に位置しています。町の玄関口であるジョグジャカルタ空港(アジスチプト国際空港)へは、首都のジャカルタや世界的リゾート地のバリ島から飛行機で1時間ほど。ジョグジャカルタ空港からプランバナン遺跡へは車で15分程度とアクセスしやすい場所にあります。
行き方
【タクシー】
よっぽどの節約旅行者でなければ、手頃な料金のタクシーで移動するのがおすすめです。料金はジョグジャカルタ空港からプランバナン遺跡までRp.50,000、市内中心部からプランバナン遺跡までRp.80,000が目安です。プランバナン遺跡周辺の寺院も合わせて巡るなら、タクシーをチャーターすると良いでしょう。チャーター料金は半日でRp.250,000、一日でRp.400,000が目安となります。
【バス】
ジョグジャカルタ空港や市内中心部からは、市バス「トランスジョグジャ」の1Aに乗って行くことができます。料金はどこから乗っても一律Rp.3,600。最寄りのバス停からプランバナン遺跡へは、徒歩15分くらいかかります。
営業時間・定休日
年中無休 6:00~18:00(最終入場は17:00まで)
入場料
入場料金は「USドル」で表記されていますが、当日レートの「ルピア」で支払うこともできます。※()内は10歳以下の子供料金です。
- プランバナン遺跡 1回券 25USドル(15USドル)
- プランバナン遺跡 2日券 40USドル(20USドル)
- プランバナン遺跡 3日券 60USドル(30USドル)
- プランバナン遺跡 4~7日券 100USドル(50USドル)
- プランバナン遺跡&プラオサン寺院&サジワン寺院 共通券 30USドル(20USドル)
- プランバナン遺跡&ボロブドゥール遺跡 共通券 40USドル(25USドル)
- プランバナン遺跡&ボコの丘 共通券 40USドル(25USドル)
所要時間
この一帯はプランバナン寺院(ロロ・ジョングラン寺院)を中心に遺跡公園として整備されており、園内にはセウ寺院、ルンブン寺院、ブブラ寺院、考古学博物館といった見どころがあります。プランバナン遺跡公園のみの見学であれば、所要時間は3時間ほど。周辺にあるプラオサン寺院やカラサン寺院などの関連遺跡も見学するのであれば、丸一日はかかります。
服装・持ち物
広大な遺跡公園内ではたくさん歩くので、服装はパンツスタイル、足元はスニーカーで訪れるのがおすすめです。園内は日差しを遮る場所がほとんどなく、湿度も非常に高いので、昼間の暑さは強烈です。帽子、サングラス、長袖、日焼け止め、飲み物など、熱中症&日焼け対策は万全に!日陰を見つけたら、少しずつ休憩しながら見学すると良いでしょう。
プランバナン寺院遺跡群の見どころ7選
プランバナン寺院遺跡群にはたくさんの見どころがあるので、これだけは見逃せないと思った見学ポイントを紹介していきます。私達はRp.250,000でタクシーを半日チャーターし、宿泊していたシェラトンムスティカホテルから周辺遺跡(サンビサリ寺院 → カラサン寺院 → サリ寺院 → プラオサン寺院)を順に巡った後、プランバナン遺跡公園を訪れました。
プランバナン寺院遺跡(ロロ・ジョングラン寺院)
プランバナン遺跡公園のチケット売り場と入場ゲートは、外国人用とインドネシア人用に分かれています。入場料はこの日のレートでRp.337,500でしたが、私達は現地ツアー会社で事前にRp.300,000でチケットを購入していたので、少し安くつけることができました。
入場ゲートを通過すると、まず最初にインフォメーションセンターがあります。見取り図付きの日本語パンフレットが用意されているので、もらっておくと良いでしょう。そして近くにあるカフェで、ウェルカムドリンクのミネラルウォーターをいただきました。
入場ゲートから先へ進んで行くと、プランバナン寺院(ロロ・ジョングラン寺院)が見えてきました。ボロブドゥール遺跡がピラミッド形なのに対し、プランバナン遺跡は天に向かってそびえ立つ炎のような形をしているのが特徴です。
見どころ①
さらに近付いていくと、プランバナン寺院と「PRAMBANAN」サインが一緒に撮影できるスポットがありました。寺院全体が一番美しく見える場所なので、まずはここで記念撮影を!
もう少し先へ進み、プランバナン寺院の東側から入場していきます。
見どころ②
入口からまっすぐに伸びる東参道では、6つの祠堂の全体像を見ることができます。中心に建つのは、ヒンドゥー教の三大神を祀る「シヴァ堂」「ブラフマー堂」「ヴィシュヌ堂」です。この3つの主祠堂の前には、それぞれの神が乗り物としていた3つの祠堂が並んでいます。
かつては6つの祠堂の周りを取り囲むように、200以上もの小祠堂(ペルワラ)が建てられていました。しかし、度重なる地震やムラピ山の噴火などでそのほとんどは崩壊。現在も修復作業は行われていますが、まだまだ崩れたままの状態となっています。
見どころ③
プランバナン寺院の一番の見どころと言えば、中央に建つシヴァ堂です。6つの祠堂の中で最も大きく、高さは47mもあります。シヴァ堂の東西南北には4つ部屋があり、内部にはシヴァ像、ガネーシャ像、アガスティア像、ドゥルガー像がそれぞれ祀られています。
東室に安置されているシヴァ神像は、破壊と創造の神です。北室のドゥルガー女神像は伝説のロロ・ジョングラン王女とされているため、シヴァ堂は別名「ロロ・ジョングラン寺院」とも呼ばれているんですよ。
西室に安置されているガネーシャ像は、知恵と学問の神様。ゾウの頭をした、ヒンドゥー教の有名な神様ですね。南室のアガスティア像は、シヴァ神の導師です。
そしてシヴァ堂の回廊を埋め尽くすように、古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」のレリーフが施されています。レリーフの上には、シヴァ神の象徴であるリンガが飾られていました。
もう一つ注目なのが、天国の樹カルパタルと獅子キンナラのレリーフです。プランバナンを代表するモチーフで、シーサーみたいな可愛い顔をしています。
見どころ④
シヴァ堂の向かって左側に建つのが、高さ33mのブラフマー堂です。堂内には1部屋しかなく、創造の神である「ブラフマー神像」が祀られています。
ブラフマー堂の回廊には、ラーマーヤナのレリーフの続きが描かれています。
レリーフの中でも有名なのが、ラーマ王子と妻シータの息子が立派に成長した姿を描いたラストシーン。どのレリーフも保存状態が良いので、生き生きとした感じが伝わってきますね。
見どころ⑤
シヴァ堂の向かって右側に建つのが、ヴィシュヌ堂です。構造はブラフマー堂と同じで、維持の神である「ヴィシュヌ神像」が祀られています。
見どころ⑥
そしてシヴァ堂、ブラフマー堂、ヴィシュヌ堂の前には、それぞれの神が乗り物としていた3つの祠堂が並んでいます。左から順にガルーダ(伝説の巨鳥)、ナンディ(聖なる牛)、ハンサ(ガチョウの姿をした神鳥)です。
つぶらな瞳が可愛いナンディ像。
見学を終えて順路通りに進むと、プランバナン寺院の北側に出ました。
セウ寺院
プランバナン寺院北側には、園内を巡回する観光バス(ミニトレイン)の乗り場があります。外国人は無料で乗車することができ、一定数の乗客が集まれば出発します。運行ルートは、ブブラ寺院とルンブン寺院 → セウ寺院で停車して写真タイム → 遺跡公園の出口まで。私達はセウ寺院で下車し、ゆっくり観光することにしました。
見どころ⑦
セウ寺院は遺跡公園内にありますが、プランバナン寺院からは約1km離れたところにあります。プランバナン寺院はヒンドゥー寺院なのに対し、セウ寺院は仏教寺院。この地でヒンドゥー教と仏教が共存していたことがよく分かるスポットです。入口では2体の守護神クベラ像が見守っていました。
セウは「1,000の寺院」の意味で、かつては主祠堂の周りに200以上ものペルワラが建っていたと言われています。ただプランバナン寺院と同じく崩壊してしまったため、再建された一部を除いては、がれきの山となっていました。
主祠堂は、珍しい正十字形をしています。
これからどんどん修復が進めば、綺麗なペルワラが並ぶ光景が見られるのでしょうね。
ルンブン寺院とブブラ寺院
観光バスはルンブン寺院とブブラ寺院には停車しないので、戻りがてら見学してきました。どちらの寺院も損傷が激しいとのことでしたが、ブブラ寺院はかなり修復が進んでいました。
ブブラ寺院よりルンブン寺院は規模が大きいせいか、修復にはまだまだ時間がかかりそうな雰囲気でしたね。
こちらはルンブン寺院の主祠堂だった建物です。この辺りはプランバナン寺院から離れているため観光客の姿はほとんど見かけず、静かな時間を過ごすことができました。
ルンブン寺院とブブラ寺院の見学を終えて出口の方へ向かうと、考古学博物館があります。入場は無料で、プランバナン遺跡で発掘された出土品などが展示されています。
出口付近には、観光客も食事できそうな雰囲気のレストランがありました。メニューも外国人向けで、1品200~300円と手頃な価格です。
ボコの丘
出口のそばには、「ボコの丘」行きのシャトルバス乗り場もあります。ボコの丘は遺跡があまり残っていないのに入場料が25USドルもするので、私達は行きませんでした。興味がある方は訪れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
プランバナン遺跡は空港から近いうえに、渋滞にもはまらずサクッと観光できるのが魅力です。ジョグジャカルタでは、一番の見どころであるボロブドゥール遺跡しか訪れない方も多いかと思います。しかし、プランバナン遺跡を見ずに帰るのはもったいないです。
私達はボロブドゥール遺跡ではマノハラホテル、中心部ではメリアプロサニホテル、空港近くではシェラトンムスティカホテルに宿泊しましたが、時間がない方は空港近くのホテルに宿泊して二大遺跡を観光するのが一番便利だと思いました。