サンパウ病院は、世界で最も美しいと言われるモデルニスモ建築の病院です。バルセロナの人気観光スポットの一つであり、その敷地内には豪華なイスラム宮殿風の病棟が建ち並んでいます。設計は天才建築家ガウディのライバルであるモンタネール氏が手掛け、1997年には世界遺産にも登録されています。
サンパウ病院は他の観光スポットに比べて混雑していないので、基本的に入場チケットの事前予約はしなくても大丈夫だと思います。私達は入場できなかったら困るので予約していきましたが、事前予約と現地購入どちらの場合も同じ料金なので損することはありません。今回はサンパウ病院に入場した様子と、チケットの予約方法について詳しく紹介していきます。
サンパウ病院について
アクセス
サンパウ病院は、サグラダファミリアの北側約1㎞の場所に位置しています。サグラダファミリアからは徒歩10分ほどで行けるため、観光のついでに立ち寄ることも可能です。地下鉄でアクセスする場合は、サンパウ・ドス・デ・マッチ駅が最寄り駅となります。
【地下鉄】
5号線のサンパウ・ドス・デ・マッチ駅(Sant Pau Dos de Maig)から徒歩1分。
【バス】
H8、19、47、117、192番のいずれかでアクセスできます。
【徒歩】
サグラダファミリアとサンパウ病院を一直線で結ぶ「ガウディ通り」を歩き約10分で到着。
開館時間
【4~10月】
月曜~土曜 9:30~19:00
日曜・祝日 9:30~15:00
【11~3月】
月曜~土曜 9:30~17:30
日曜・祝日 9:30~15:00
休館日
12/25
無料開放日
毎月第1日曜、4/23、9/24は終日無料で入場できます。
※一般入場だけが無料となり、ガイドツアーは有料です。
入場料
一般入場チケット | ガイドツアー | |
---|---|---|
大人 | 15ユーロ | 20ユーロ |
シニア(65歳以上) | 10.5ユーロ | 14ユーロ |
12~29歳 | 10.5ユーロ | 14ユーロ |
12歳未満 | 無料 | 無料 |
※割引料金の方は、年齢確認のできる身分証明書(パスポート等)を当日持参して下さい。
ガイドツアー
ガイドツアーに参加すると、一般入場では立ち入ることのできない場所へも案内してもらうことができます。ガイドツアーには日本語がないため、英語、スペイン語、カタルーニャ語、フランス語のいずれかでの案内となります。ツアーの所要時間は約1時間。
【ガイドツアーのスケジュール】
英語 11:00(金・土・日・祝)
スペイン語 12:00(金・土・日・祝)
カタルーニャ語 12:30(金・土・日・祝)
フランス語 10:30(土曜のみ)
所要時間
サンパウ病院の観光にかかる所要時間は、1時間が目安となります。敷地内には病棟がたくさんありますが、見学できる建物は限られているので、ゆっくりと見学しても1時間半あれば足りるでしょう。
サンパウ病院の入場レポート
サグラダファミリアからサンパウ病院へ
私達はサグラダファミリアを観光した後に、徒歩でサンパウ病院へ向かいました。サグラダファミリアからは、サンパウ病院へと一直線に延びる「ガウディ通り」を北に向かって10分ほど歩けば到着します。
ガウディ通りにはベンチがたくさん設置されており、のんびりと寛ぐ市民や観光客の姿が見られました。中央部分は歩行者専用スペースになっているので歩きやすかったです。後ろを振り返ると、巨大なサグラダファミリアがそびえ立っているのが見えますね。
ほどなくすると、サンパウ病院の正面玄関にあたる「管理事務分館」が見えてきました。両手を広げたように迎えてくれる、素敵なデザインの建物です。サンパウ病院は街の区画に対して斜め45度に傾けて造られているため、建物の正面はガウディ通りに面しています。
入口は管理事務分館の右側にあります。
チケット売り場にて事前予約のバウチャーを提示し、本チケットと引き換えてもらいました。※現在はチケットの引き換えが必要なくなり、バウチャーがあればすぐに入場できます。
日本語の無料パンフレットと、自由見学者用の緑色のシールを貰いました。ガイドツアーの人と区別するため、色の違うシールを目立つ所に貼って見学します。
パンフレットは写真付きで分かりやすく、ナチュラルな日本語なので読みやすかったです。内部を見学できる建物は3か所だけとなっていますね。それでは早速見学していきましょう!
サンパウ病院を見学する
サンパウ病院は正式名称を「サンタ・クレウ・イ・サン・パウ病院」と言い、銀行家パウ・ジウ氏の寄付によって建てられた巨大病院です。当時あった6つの病院を統合し、28年もの歳月をかけて造られました。1930年に完成し、2009年までは実際に病院として使われていたそう。設計を担当したのは、ガウディのライバルだったルイス・ドメネク・イ・モンタネール氏。この二人はモデルニスモ建築を代表する建築家で、師弟関係にあったことでも有名です。
まず最初に地下の通路を進んでいきます。見取り図で「トンネル」と書かれている部分です。各病棟は雨風をしのげるように、全て地下通路で繋がっています。病棟間で患者を移動しやすいように機能性も考えて造られていたそう。天井から光が取り込まれているので、白いタイルがキラキラと反射して綺麗ですね。
トンネルから地上へ出ると、左右対称のそっくりな建物が並んでいます。当初の予定では48の建物が建設される予定でしたが、最終的には27棟に。このうち16棟がモダニズム建築の建物で、12棟はモンタネールの設計、残りの4棟はモンタネールの息子によって設計されました。
中庭の中央にある建物は手術棟。正面ファサードは、青と白の美しいタイルと様々な彫刻によって装飾されています。一番上には両手を広げた天使像があり、この他にも有翼のライオン、口を開けた有翼のドラゴン、胸に手を当てた天使といった彫刻が施されています。
手術棟の裏側はガラス張りのテラスになっており、中庭を眺められる設計になっています。中庭にはオレンジの木や落葉樹などの樹木、ラベンダーやローズマリーといったハーブ類が植えられていました。モンタネールは自然豊かな環境作りも治療の一環だと考えていたそう。
右端にある建物から反時計回りで順番に見学していきます。こちらは聖ジョルディ分館で、かつては総合救急科と小児科として使われていた病棟。カラフルな瓦屋根と、王冠のような形をした換気口が特徴です。
外壁に描かれていたモザイク画。
他の病棟に比べてこじんまりとした建物で、内部は展示スペースとなっていました。波打った天井のタイル装飾が可愛らしいです。バラと葉っぱの模様かな?
部屋の壁一面は真っ白な陶器タイルで覆われていますが、これは消毒がしやすいようにタイル張りにしたそう。機能性を持たせつつ、デザイン性も考えられているんですね。
聖ジョルディ分館の隣に建つのは、聖サルバドール分館。サンパウ病院の建物はすべてレンガ製で、各棟にはドーム型の娯楽室と給水塔が備わっています。ドームを覆っているのは、うろこのような形をしたカラフルな瓦。まるでイスラム宮殿のような外観をしていますが、これはムデハル様式というイスラムとキリストが融合したスペイン独自の建築様式なんです。
聖サルバドール分館の隣に建つ、聖レオポルド分館。どの建物もそっくりな外観をしているのですが、よく見るとドーム部分などが微妙に違っていたりします。間違い探しみたい?(笑)
聖レオポルド分館の隣に建つ聖ラファエル分館は、内部を見学できました。
ドームの周りには、怪物のような形をしたガーゴイル(排水口)が付いていますね。
ここは入院病棟だった建物で、当時は娯楽室や医局なども設けられていました。広々とした室内には、窓からたくさん光が取り込まれるようになっています。モンタネールは患者に圧迫感を与えないように、病棟間や庭園、室内までもゆったりと設計したそう。アーチ状の天井が特徴的で、壁は掃除がしやすい陶器タイルで覆われていました。
タイルは淡い緑色を基調とし、赤や黄色の草花が描かれています。こんな可愛いタイルを見ていたら、塞ぎがちな入院生活も明るい気分で過ごせそうですね。
聖ラファエル分館の隣に建つのは、聖マヌエル分館。これまで見てきた3つの建物とは、デザインが違うのが分かるでしょうか?聖マヌエル分館と中庭を挟んで反対側に建つ聖母モンセラット分館は、半地下の上に2階建てという設計です。これはサンパウ病院が傾斜地に建てられているため、各病棟の高さが視覚的に調和するように設計されているからなんです。
敷地の一番奥にある建物は、修道女の宿舎。この建物の後方には近代的な建物があるのですが、これが現在のサンパウ病院です。病院としての機能は、この新館に移行されているそう。右側の男性用病棟の見学が終わったので、次は左側の女性用病棟を見ていきます。
聖母モンセラット分館は反対側に建つ聖マヌエル分館と同じく、半地下の上に2階建てという構造です。尖塔の陶器装飾、窓枠のデザインにも一つ一つこだわりが感じられますね。
聖母モンセラット分館の隣に建つのは、聖母メルセ分館。各分館の名称は、それぞれの入口の上に立つ守護聖人像にちなんで名付けられているそうです。
聖母メルセ分館の隣に建つ、聖母カルメ分館。
聖母カルメ分館の隣に建つ、聖母プリッシマ分館。見取り図には書かれていなかったのですが、内部が見学できるようになっていました。
まだ修復工事の途中らしく、天井にはネットが張られていました。当時の写真が展示されているだけで、内部はがらんとしています。
サンパウ病院の管理事務分館を見学する
ぐるっと一周して管理事務分館に戻ってきたので、次は内部を見学していきます。館内にはホールや回廊、礼拝堂などがあり、サンパウ病院の中で最も豪華に装飾された病棟になります。
足を踏み入れると、一番最初に目に飛び込んでくるのがピンクの玄関ホールです。ピンクの天井タイルと大理石の柱がなんともメルヘンチック!天井には9つの丸天井が広がっており、ピンクタイルの間には数字や紋章の描かれたモザイクが施されています。「Α1905」は工事開始年で、「Ω1910」は工事終了年、その他にもバルセロナ市の紋章などが描かれています。
「建築の力で患者を癒す」ことをモットーに病院建築に取り組んだ、モンタネールの優しさが感じられる空間となっていますね。
奥にある階段ホールも素敵なデザイン。階段脇にはレリーフがあり、ステップの部分にまで模様が施されています。壁には、病院建設のパトロンだったパウ・ジウ氏のイニシャルであろう「P」「G」の文字と十字架模様が刻まれていました。
階段ホールを見上げると、ステンドグラスのドーム天井が飛び込んできます。万華鏡のように輝く美しいステンドグラス。
2階へ上がると、そこにも素敵な空間が広がっていました。馬蹄形アーチやカリグラフィーのような文字装飾など、随所にイスラム建築の要素が取り入れられていますね。
中は礼拝堂になっており、ステンドグラスの大きな窓からは優しい光が差し込んでいます。よく見ると左側のレリーフの奥には、磔にされたキリスト像が掲げられていました。
レリーフの下には、植物模様のモザイクタイル。花柄の白いレリーフタイルと色鮮やかなモザイクタイルも素敵です。
天井は波打った独特の形をしており、淡い黄色やオレンジ、水色のタイル装飾が施されていました。モンタネールは人を癒すカラーのピンクや黄色を率先して取り入れたそうです。
窓からは先ほど見学した中庭が見えました。こうやって改めて見ても病院という感じは全くしません。カラフルな装飾で彩られた赤レンガの建物が並ぶ光景を眺めていると、まるでおとぎの世界に迷いこんでしまったようです。
次は1階に戻り、回廊を見ていきます。回廊の天井もパステルカラーで可愛らしいです。
回廊に面していくつか小部屋があり、床にはびっしりとモザイクタイルが施されていました。結構古そうな感じだったので、当時のオリジナルのタイルかもしれませんね。
回廊の奥には、天井がゴージャスな会議室または講堂のような場所がありました。以上で、サンパウ病院の見学は終了となります。
出口は聖ジョルディ分館の前にあります。一度、管理事務分館の裏側から出て右側に回り込まないといけないので出口が少し分かりにくかったですね。